日本ではあまり馴染みのないバックグラウンドチェックですが、海外では数多くの企業で導入されています。
近年ではアメリカなどに本社を置く外資系企業を中心に日本でも導入が進んでおり、今後はより多くの企業でバックグラウンドチェック導入が進むでしょう。
今回の記事では、バックグラウンドチェックの実施内容や外資系企業の事例、英語で実施された場合の対処法、実施時の注意点などを解説します。
アマゾンやアクセンチュア、マイクロソフトといった外資系企業の実態についても触れているので、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- バックグラウンドチェックとは
- 外資系企業のバックグラウンドチェック実施状況
- バックグラウンドチェックを実施している外資系企業の事例
- バックグラウンドチェックを受ける際の注意点
目次
バックグラウンドチェックとは
バックグラウンドチェック(Background check)は採用調査・身辺調査とも呼ばれる雇用前の身元調査で、採用選考段階で採用候補者の経歴をチェックするために実施されます。
採用面接では見抜けない経歴詐称を防止することが可能です。
実施する際には個人情報保護法などに注意し、違法性なく実施しなければなりません。
バックグラウンドチェックのメリットや実施方法などは以下の記事で詳しく解説しています。
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バックグラウンドチェック(採用調査・身辺調査)とは?内容や実施方法を解説
企業が中途採用を行う際、採用候補者の過去の経歴を把握することは簡単ではありません。そこで用いられてきたのが「バックグラウンドチェック(採用調査・身辺調査)」です。 今回はバックグラウンドチェック(採用 ...
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バックグラウンドチェック実施の目的
採用企業がバックグラウンドチェックを実施する目的は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 経歴詐称・詐欺を防止
- 候補者の情報の信憑性をチェック
採用において内定取り消しや入職後の解雇は重大な理由がない限り難しいです。
したがって採用候補者がトラブルを起こし会社に不利益を与えてしまわないように、慎重に選考することが重要です。
バックグラウンドチェック実施の流れ
バックグラウンドチェックは、以下のような流れで実施されています。
【バックグラウンドチェックの流れ】
- 採用企業がバックグラウンドチェックの実施を決める
- 転職候補者はバックグラウンドチェックの実施に同意する
- 採用企業が調査会社にバックグラウンドチェックを依頼する
- バックグラウンドチェックが実施される
採用企業は採用候補者からバックグラウンドチェック実施の同意を得たら、調査会社に依頼し内容を細かく指示します。
また、採用候補者は卒業証明書や前職の在籍証明書、退職証明書の提出を求められる場合があります。
その他にも調査会社独自のデータベースによる調査や周囲への聞き込みなど、実施方法はさまざまです。
バックグラウンドチェックの詳しいやり方・実施の流れは以下の記事をご覧ください。
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バックグラウンドチェック(採用調査)のやり方は!?調査項目や実施方法を徹底解説
外資系企業などの中途採用の選考時に実施されるバックグラウンドチェック。応募書類や面接において虚偽や経歴詐称かないかを調査するものですが、どのように進めるのでしょうか。 ここでは、バックグラウンドチェッ ...
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バックグラウンドチェックで調査される転職候補者の情報
バックグラウンドチェックで調査される転職候補者の情報は以下のとおりです。
【バックグラウンドチェックで調査される情報】
- 学歴
- 職歴
- 勤務態度
- 反社会的勢力との繋がりを確認
- 犯罪歴
- 自己破産歴
- SNS等インターネットメディアの調査
バックグラウンドチェックの詳しい調査内容については以下の記事もご参考にしてください。
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バックグラウンドチェックでは候補者の情報をどこまで調査できる?調査内容と方法も解説
候補者の経歴に問題や詐称がないかを調査するバックグラウンドチェック。 コロナショックによるウェブ面接の広がりから、候補者の適正を見抜くことの困難さを背景に活用する企業もあります。 ここでは、バックグラ ...
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外資系企業の本社(アメリカ)のバックグラウンドチェック実施状況
外資系企業を中心に導入が進んでいるバックグラウンドチェック。
元々は外資系企業の本社(主にアメリカ)で実施されていましたが、近年は日本などの支社でも導入が進んでいます。
以下では、具体的にどのくらいの割合で外資系企業が本国でバックグラウンドチェックを実しているのか解説します。
アメリカでは95%の企業がバックグラウンドチェックを実施
世界的採用調査協会(NAPBS)が後援するHR.comのレポートによると、アメリカの企業の95%がバックグラウンドチェックを実施しています(2018年調査)。
また正社員だけでなく、パートタイムで契約される従業員においても行われているようです。
アメリカでは、学歴や職歴以外にも
- 犯罪歴
- 事故歴
- 自己破産歴
- 懲戒処分歴
- 薬物使用
などが詳しく確認されています。
参考:雇用者なら知っておきたい”アメリカで95%の企業がバックグラウンドチェックを行っている理由”
外資系企業の過半数がリファレンスチェックを実施
バックグラウンドチェックと同じような目的で行われているリファレンスチェックですが、日本の外資系企業においても半数以上が実施しています。(en worldによる)
日本の企業ではまだ3割程度しか行われていませんが、外資系企業の実施率がさらに増加すれば日本企業へも大きく影響してくると予想できます。
引用:中途採用における、リファレンスチェック実施状況調査 |外資系企業(グローバル企業) の転職エージェント
バックグラウンドチェックがアメリカで一般的である背景・理由
アメリカにおいてバックグラウンドチェックの実施が一般的である理由は3つあります。
【欧米でバックグラウンドチェックが一般的な理由】
- 犯罪率が高い
- 犯罪内容が重い
- ネグリジェント・ハイヤリングという考え方がある
アメリカは日本に比べて犯罪率が高く、犯罪内容も重たい場合が多いです。
そのため採用プロセスにおいて、トラブル歴の確認は当たり前のように行われています。
また、アメリカにはネグリジェント・ハイヤリングという考え方があります。
これは「過失採用」や「怠慢雇用」という意味です。
もし企業が十分な調査をしないまま採用しトラブルを起こしてしまった場合、過失採用として企業が責任を問われることがあるようです。
転職候補者もバックグラウンドチェックを実施していない企業を「従業員に興味がない」と判断し、応募しないことが多いようです。
このようにアメリカにおいてバックグラウンドチェックの実施は、雇用の質を上げるだけでなく自社の評判を守ることにも繋がっています。
外資系企業の日本でのバックグラウンドチェック実施状況
アメリカではほとんどの企業で行われているバックグラウンドチェックですが、日本の外資系企業でも実施されていることがあります。
ここでは外資系企業における、バックグラウンドチェックの実施状況について解説します。
日本の法律に基づいた形でバックグラウンドチェックを実施
日本の外資系企業でも、アメリカなど本社からの指示があれば実施されているようです。
しかし、日本と外国の法律は異なるため、個人情報保護などの観点から中には調査が困難な項目もあります。
したがって、日本でのバックグラウンドチェックは、日本の法律に基づいて可能な範囲で行われています。
バックグラウンドチェックに関する法律は以下の記事をご覧ください。
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バックグラウンドチェック(採用調査)は違法?【関連法を踏まえて徹底解説】
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外資系金融機関の場合、企業が個人の借金データを閲覧している可能性も
外資系金融機関などのお金を扱う企業の場合は、借金歴を確認される場合があります。
金融系の企業はCIC、JICC、全銀協という3つの信用情報機関に登録しており、転職候補者の情報を調べることができるからです。
面接で借金や自己破産などお金に関する内容を聞かれた際に嘘をつくと、バックグラウンドチェックでばれてしまうことがあるので注意してください。
バックグラウンドチェックで採用企業にバレる候補者の情報については以下の記事で詳しく説明しています。
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バックグラウンドチェック実施で経歴詐称がバレる?【採用企業にバレる情報を徹底解説】
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バックグラウンドチェックを実施している外資系の業界
外資系では一般的となっているバックグラウンドチェック。
外資系コンサルティング業界をはじめとして、外資系IT、外資系金融(外資系投資銀行)など多くの外資系がバックグラウンドチェックを実施しています。
ここでは、実施業界別にバックグラウンドチェックの状況を紹介します。
【バックグラウンドチェックを実施している外資系の業界】
- 実施業界1:外資系コンサルティング
- 実施業界2:外資系IT
- 実施業界3:外資系金融(外資系投資銀行)
順に解説していきます。
実施業界①:外資系コンサルティング
外資系コンサルティング業界は、クライアント企業の経営上の課題を解決するためのコンサルティング事業で、戦略からIT、業務改善など様々な領域があります。
外資系コンサルティング業界の企業例としては以下のとおりです。
【戦略コンサルティング】
- ボストンコンサルティンググループ
- マッキンゼーアンドカンパニー
【IT・総合コンサルティング】
- アクセンチュア
- IBM
- デロイトトーマツ
選考フローは、書類選考・適性検査・面接のほか、論理的思考力を測るためのケーススタディ・フェルミ推定などを問われることもあります。
バックグラウンドチェックやリファレンスチェックは、採用ポリシーなどに基づき、実施することがほとんどでしょう。
実施業界②:外資系IT
外資系IT業界は、メーカーやベンダー、コンサルティングなど領域は様々です。
外資系IT業界の企業例としては以下のとおりです。
【メーカー】
- 日本マイクロソフト
- 日本HP
【ベンダー】
- 日本IBM
- 日本オラクル
【コンサルティング】
- アクセンチュア
- アビームコンサルティング
選考フローは、書類選考・適性検査・面接とベーシックですが、コンサルティング業界と同様にケーススタディが課されることもあります。
外資系IT業界でも、バックグラウンドチェックやリファレンスチェックを実施することが大半です。
実施業界③:外資系金融(外資系投資銀行)
外資系金融業界は、投資銀行や証券会社、クレジットカード会社などがあります。
外資系金融業界の企業例としては以下のとおりです。
【投資銀行】
- ゴールドマン・サックス
- モルガン・スタンレー
【証券会社】
- メリルリンチ日本証券
- クレディ・スイス証券
【クレジットカード会社】
- アメリカン・エキスプレス
- ダイナースクラブ
選考フローは、書類選考・適性検査・面接のほか、「ジョブ」といわれる財務分析やM&Aなどの仕事に取り組むことや、「スーパーデイ」といわれる複数回にわたって管理職クラスの社員との面接があり、ハードな選考となります。
外資系金融業界においても、バックグラウンドチェックやリファレンスチェックが実施されます。
不正やトラブルは金融機関にとって重大な問題になりかねないため、バックグラウンドチェックは特に重視されるでしょう。
バックグラウンドチェックを実施している主な外資系企業
ここまで、バックグラウンドチェックの実施内容や外資系企業のバックグラウンドチェック実施状況を解説しました。
以下では、具体的にどのような外資系企業がバックグラウンドチェックを実施しているのかご紹介します。
【バックグラウンドチェックを実施している外資系企業】
- アクセンチュア
- アマゾン・ジャパン
- マイクロソフト
順にご紹介していきます。
外資系企業➀:アクセンチュア
アクセンチュアは、デジタル領域に強みを持つ世界有数の総合コンサルティングファームです。
バックグラウンドチェックを実施する旨が、アクセンチュア採用ページに記載されています。
バックグラウンドチェックの調査内容は以下のとおりです。
【バックグラウンドチェックの調査内容】
- 身分証明の確認
- 学歴調査
- 職歴調査
- 過去の雇用主への身元照会
また、転職候補者に提出を求めている書類としては以下のとおりです。
【転職候補者に求める書類】
- 卒業証明書
- 現職の源泉徴収票
- 前職者からの評価書類
参考:『バックグラウンドチェックの基準について -アクセンチュア株式会社-』
外資系企業②:アマゾン
アマゾン・ジャパンは、Eコマースや動画ストリーミング配信などのクラウドサービスを展開するグローバルIT企業です。
アマゾン・ジャパンを受験した方の口コミによるとバックグラウンドチェックの調査項目は以下のとおりです。
【バックグラウンドチェック調査項目】
- 学歴の確認
- 職務経歴
転職候補者には卒業証明書や在籍証明書の提出が求められ、その後現職の同僚や上司への連絡が入る場合もあります。
またバックグラウンドチェックはアマゾンフレックスでの契約の際も行われています。
アマゾンフレックスとは、アマゾンと業務委託を結び荷物配送の業務を行う仕事のことです。
手続き完了後にバックグラウンドチェックが行われ、1~3営業日程度で結果が出ます。
外資系企業③:マイクロソフト
日本マイクロソフト株式会社は、就職前スクリーニングとして、バックグラウンドチェックを実施しています。
従業員、顧客、財産、個人データなどを適切に保護する安全な環境を維持することを目的としています。
同社のグローバルセキュリティ部門では、現地の法律で許容される範囲内で「最終学歴」「5年間の職歴」「犯罪歴」などのチェックが就職前スクリーニングに含まれていることが確認できます。
米国の Microsoft Onlineサービスを提供するための採用候補者は、追加で「Microsoftクラウドのバックグラウンドチェック」が必要とされています。
バックグラウンドチェックは横須賀米軍基地などの採用でも実施
横須賀米基地などの米軍基地は、アメリカの法律やルールが適用されており、バックグラウンドチェックも例外ではありません。
軍隊である以上、アメリカの敵国スパイなどを採用しないように、厳格なスクリーニングが必要でしょう。そのような背景から、バックグラウンドチェックの対象は、自身のほか親族までとされているようです。
また、日本では取得が認められていない思想や所属する宗教団体などの個人情報も、アメリカにおける法律の下、対象になっていると考えられます。犯罪歴はもちろん、前歴があるかも調査対象になっています。
外資系企業のバックグラウンドチェックを受ける際に注意すべき点
外資系企業においてバックグラウンドチェックをクリアすることは、内定を獲得する重要なポイントだといえます。
ここではバックグラウンドチェックを受ける際に注意するべき点を、いくつかご紹介します。
【外資系企業のバックグラウンドチェックの注意点】
- 英語でバックグラウンドチェックが実施される場合がある
- 回答時に嘘はつかない
- 実施前に懸念事項は伝えておく
- オファーレター(内定)後にバックグラウンドチェック実施後の可能性も
順に解説していきます。
英語でバックグラウンドチェックが実施される場合がある
本社が英語圏の外資系企業の場合、バックグラウンドチェックが英語で実施されることがあります。
バックグラウンドチェックの調査会社が翻訳をするケースもありますが、採用候補者が自ら、翻訳を実施しなければならないケースもあります。
その場合は、バックグラウンドチェックの書類が出来上がったあと、スペルや文法などの体裁面のほか「翻訳に誤りがないか」「意味や内容は伝わるか」など、英語ネイティブの人材にチェックをしてもらうことが重要です。
英語ネイティブの人材が身近にいない場合、有償での翻訳や校正の依頼をすることも検討が必要でしょう。
採用企業への提出書類や面接で嘘をつかない
当たり前ではありますが、履歴書や職務経歴書には真実を正しく記載してください。
虚偽の申告が見つかった場合、採用される可能性はゼロに等しいです。
もし仕事に就いていない空白の時間があったとしても、すべて正直に書くべきでしょう。
書き間違いにも十分気を付けてください。
バックグラウンドチェックの調査内容の厳しさについては以下の記事で解説しています。
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バックグラウンドチェック実施前に懸念事項を採用企業に伝えておく
もしも過去にトラブルなど経歴に懸念事項がある場合は、採用企業へ先に共有しておくのも良いでしょう。
もし採用企業が調査会社を通して虚偽の事実を知ってしまうと「後ろめたいことがあるのではないか」と判断され、あまりいい印象は受けません。
バックグラウンドチェックの調査内容で採用選考に影響する内容については以下の記事で解説しています。
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オファーレター後にバックグラウンドチェック実施の可能性も
最終面接前後に実施されることの多いバックグラウンドチェック。
内定後のバックグラウンドチェックは、問題が発覚したときに内定取り消しが困難なことから、内定前に実施されることが多くあります。
ただし、外資系企業では、オファーレター後、内定受諾前にバックグラウンドチェックを実施されることもあるでしょう。
外資系企業では、バッグラウンドチェックを実施することは一般的ですので、オファーレター後に実施されることがあることに留意が必要です。
外資系企業のバックグラウンドチェック実施前に流れや注意点を確認しておこう
本記事ではアメリカなどに本社を置く外資系企業のバックグラウンドチェックの実施状況や企業事例、実施時の注意点などについて解説しました。
外資系企業のバックグラウンドチェックを受ける予定がある方は、ぜひ本記事を参考にバックグラウンドチェックに臨んでください。
最後に、外資系企業のバックグラウンドチェックのポイントまとめます。
【外資系企業のバックグラウンドチェックのポイント】
- 外資系企業の本社アメリカでは犯罪などが多い背景から導入が進んでいる
- アクセンチュア・アマゾン・マイクロソフトなど外資系大手企業も多数実施
- 外資系企業のバックグラウンドチェックは英語で実施される場合もある
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