リファレンスチェック

リファレンスチェックで内定取り消しは違法!?関連法を踏まえて解説

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リファレンスチェックは、日本の転職市場では馴染みがありませんが、外資系企業を中心に前職調査の裏付けや雇用のミスマッチを防ぐ手段として、近年注目されています。

リファレンスチェックを実施する前のよくある疑問・悩みとして「リファレンスチェック実施後に内定取り消しは違法?」などがあります。

書類や面接では見抜けなかった思わぬ候補者の情報がきっかけで、内定取り消しを検討する採用企業も多いですよね。

そこで本記事では、リファレンスチェックの概要やリファレンスチェックによって発覚する内定取り消しの要因、内定取り消しの法的可否や留意点について解説します。

この記事でわかること

  • リファレンスチェックとは
  • リファレンスチェック実施後に内定取り消しになりうる要因
  • リファレンスチェック実施後に内定取り消しは違法になるうるか

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リファレンスチェックとは?

リファレンスチェックは、一言でいうと「転職候補者の前職調査」です。

以下では、リファレンスチェックの意味やメリット、質問内容について説明します。

 

リファレンスチェックとは?

リファレンスチェックとは、中途採用の際に転職候補者の経歴や人物像、勤務状況などについて、第三者である前職の上司等を対象に行う調査です。

日本でも外資系企業やグローバル企業では一般的に行われています。

雇用のミスマッチを防ぐことのほか、申告されたレジュメや話に矛盾・虚偽がないかなどの経歴確認を目的として、採用企業において転職候補者の同意の下で実施します。

 

以下の記事では、リファレンスチェックの実施メリットや実施の流れなどを解説しています。

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リファレンスチェック実施の効果・メリット

リファレンスチェックは、採用企業にとって次のような効果・メリットがあります。

【リファレンスチェックの効果・メリット】

  1. 雇用のミスマッチを防げる
  2. 経歴詐称を防げる
  3. 第三者による信憑性のある情報を得られる
  4. 客観的な人物像や退職理由を確認できる
  5. 申告されていない情報を得ることができる
  6. 転職候補者の育成に活かすことができる

転職候補者は、採用面接やレジュメで実績・経歴を誇張して申告する、あるいは嘘をつくことがあります。

その結果、雇用のミスマッチによって早期退職につながる、あるいは採用後に経歴詐称が発覚しても解雇をできるとは限らず、転職候補者の経歴は選考段階で十分にチェックする必要があります。

 

リファレンスチェックは、前職の同僚や上司などを対象に、一緒に働いていた第三者の客観的な目線で、経歴や人物像、退職理由など転職候補者の信用度を把握することが可能です。

また、リファレンスチェックによって、転職候補者の人物像や行動特性などを把握することで、採用後に転職候補者が活躍しやすい環境を整えることができるといった効果もあります。

 

リファレンスチェック実施時の質問内容

リファレンスチェックは、採用企業が直接電話などで実施する場合や、リファレンス業者を通じてウェブ上で実施するケースがありますが、次のような質問内容が一般的です。

【リファレンスチェックの質問内容】

  • 職歴や経歴
  • 退職理由
  • 人物像や勤務態度
  • 職務能力、スキル
  • 転職候補者が活躍するための配慮事項

職歴や経歴、退職理由など、転職候補者による申告内容に誇張や詐称がないかを判断するほか、人物像などの客観的な評価を得るための質問項目が多くを占めます。

また、強みや弱み、活躍するために留意することなど、転職候補者が採用企業で活躍するための配慮に関する質問をすることもあり、転職候補者を入社後にリテンションするにも有効な質問です。

 

リファレンスチェック実施によって発覚する内定取り消しの要因

リファレンスチェックによって発覚する内定取り消し要因は、主に次のようなことが挙げられます。

【リファレンスチェックによる内定取り消しの要因】

  • 経歴詐称:経歴や職務内容などで嘘をついていたこと
  • 社内トラブル:職場で問題を起こしていたこと
  • 周囲からの悪評:前職・前々職の上司・同僚・部下などからの評判が悪い

順に解説していきます。

 

リファレンスチェック実施による内定取り消しの要因①:経歴や職務内容などで噓をついていたこと

転職候補者は、自分をよく見せようと経験や実績を大袈裟に誇張することがあるほか、悪質な場合は経歴を詐称することもあります。

履歴書・職務経歴書などのレジュメや面接で話した内容について、「嘘をついていた」「話を盛っていた」などは、リファレンスチェックで容易に発覚します。

 

リファレンスチェック実施による内定取り消しの要因②:職場で問題を起こしていたこと

転職候補者が前職で問題を起こしていたとしても、自ら申告する義務はなく、企業から問われない限り答える必要もありません。

そのため、転職候補者が前職で問題を起こしていたとしても、レジュメや面接だけでは、その事実を把握することが難しいことがあります。

このような問題事項など、転職候補者が秘匿する可能性がある事項については、リファレンスチェックによって、前職の上司や同僚から聞き取りできる可能性があります。

 

リファレンスチェック実施による内定取り消しの要因③:周囲からの評価が悪いこと

学歴や職歴、面接による評価から、採用企業が転職候補者に対して高い評価をしていたとしても、実際は、前職の上司や同僚など周囲からの評価が低いということがあります。

このような評価のギャップについても、リファレンスチェックを行うことで、前職の職場における評価を把握することでミスマッチの防止が可能となります。

 

リファレンスチェック実施による内定取り消しの要因④:面接の印象と異なる

「面接ではポジティブな印象だったが、実は非常にネガティヴ」といった問題が、リファレンスチェックで発覚することもあります。

リファレンスチェックの情報と面接で印象が異なるといった理由だけでは、内定取り消しの合理性は認められないと考えられます。

しかし、他の内定取り消し要因発覚のきっかけとなる可能性があるでしょう。

 

リファレンスチェック結果による内定取り消しは違法?

リファレンスチェックによって内定取り消し要因となる事項を把握した場合、内定取り消しをすることが適法であるか、違法であるかを解説します。

 

内定取り消しに関する法律

内定は、法的に「就労始期付解約権留保付労働契約」と位置付けられています。

つまり、内定は労働契約が成立することを意味しますが、この契約においては、客観的・合理的に認められ、社会通念上相当と認められる場合に限り、内定中に解約権を行使できる契約となります。

 

リファレンスチェック実施による内定取り消しが認められる場合

労働契約であることから解雇と同様の扱いとなり、内定取り消しが認められるケースは極めて限定的となり、「客観的・合理的に認められ、社会通念上相当」である場合は、内定取り消しが認められます。

 

なお、事業の縮小など企業側の都合による場合は、整理解雇の4要件といわれる「人員整理の必要性」「解雇回避努力義務の履行」「被解雇者選定の合理性」「手続の妥当性」のすべての要件を満たす必要があります。

基本的には、採用内定通知や誓約書等に記載されている内定取り消し事由が生じた場合、その内容に不合理がない場合は認められると考えられますが、それ以外については、「健康を著しく害し、勤務に耐え難い」「重大な経歴詐称」「採用を差し控えざるを得ない罪を犯し、有罪判決を受けたとき」「学校を卒業できなかった場合」などが主となります。

 

過去判例では、内定者が起訴猶予処分を受ける程度の違法行為に積極的に関わった事案で、内定取り消しを適法と認められた例があります。

【参考】採用内定取消 雇用関係紛争判例集(労働政策研究・研修機構)

 

リファレンスチェック実施による内定取り消しが違法になる場合

労働契約であることから、「客観的・合理的に認められ、社会通念上相当」と認められない場合は、「解雇権濫用」として、内定取り消しは認められません。

また、事業の縮小など企業側の都合による場合は、原則、整理解雇の4要件のすべてを満たさないと同様に、内定取り消しは認められません。

 

過去判例では、中途採用にて、前職の悪い噂に基づき内定取り消しをした事案に対し、裁判所は確実な証拠に基づく事由がなければならないとして、違法と判断した例があります。

【参考】採用内定取消 雇用関係紛争判例集(労働政策研究・研修機構)

 

リファレンスチェック実施結果を理由に内定を取り消したい場合

内定取り消しは解雇と同様の扱いのため、認められる範囲は極めて限定されています。

そのため、合法性を専門家に確認し、万が一の場合に備え、補償・賠償をも検討しておく必要があります。

 

リファレンスチェック実施による内定取り消しが合法かどうか専門家に相談すること

ファレンスチェック結果を理由に内定取り消しをするには、解雇要件を満たしているかの観点で「客観的・合理的に認められ、社会通念上相当」と認められるかを確認する必要があります。

経歴詐称や事件を起こして有罪判決を受けるなど、重大な事象の場合がリファレンスチェックで内定取り消しができる主なケースとなります。

内定取り消しは解雇と同様の扱いとなり、紛争が起きやすい労働問題ですので、必ず弁護士などの専門家に合法性を確認しましょう。

 

リファレンスチェックの関連法や違法性に関しては、以下の記事で解説しています。

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リファレンスチェック実施による内定取り消しの補償・賠償を検討すること

 

内定取り消しは、法的に解雇の扱いとなるため解雇手続きが必要となり、基本的には、30日前の予告、30日前の予告をしない場合は30日分以上の平均賃金の支払いが必要となります。

また、転職候補者から内定取り消し無効を主張された場合、入社予定日からの不就労期間の賃金支払いを請求されることや、内定取り消しが不法行為にあたる場合は、損害賠償請求がされることもあります。

このように補償や賠償を検討する必要がありますが、弁護士などの専門家に相談しましょう。

 

内定取り消しに関する判例:大日本印刷事件

内定取り消しに関する重要な判例としてあげられる大日本印刷事件(最判昭和54年7月20日)。

本事件は、4月入社の新卒採用として内定を受けていた学生に対し、当該企業から直前の2月に内定取り消しとした事件です。

内定取り消し事由は、「学生がグルーミーな印象である」といったものでしたが、「解雇権の濫用」として内定取り消し無効と判断されています。

企業と求職者間で内定関係が成立した段階で、求職者は他企業への就業機会を放棄することが通常です。

これにより、内定は試用期間中の労働者と同様の地位にあるとし、「就労始期付解約権留保付労働契約」という労働契約が成立する考え方がこの判決で確立されています。

 

リファレンスチェック実施のベストタイミング(内定前?内定後?)

内定取り消しの法的リスクを踏まえて、リファレンスチェックをいつ実施すべきかについて説明します。

 

リファレンスチェックを内定後に実施することはリスクが大きい

リファレンスチェックを内定後に行った場合、転職候補者と労働契約が成立していることから、内定取り消しが認められることは極めて限定的です。

採用企業にとってリスクが高いため、トラブルを避けるためにも、リファレンスチェックは必ず内定前にしてください。

 

リファレンスチェックは「最終面接前後(内定前)」に実施することが最適

リファレンスチェックの実施タイミングは、次の理由から、最終面接前後が最適といえます。

【選考の段階だとリファレンスチェックの拒否・選考辞退の可能性がある】

転職候補者にとってハードルの高いといえるリファレンスチェックを選考の早い段階で行った場合、転職候補者の志望度合いが高くない、あるいは醸成されていないことから、リファレンスチェックの拒否・選考辞退がされる可能性があります。

リファレンスチェックが拒否・選考辞退される理由や対処法は以下の記事で詳しく解説しています。

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【実施コストの優位性がある】

リファレンスチェックを最終面接前に実施する場合は、リファレンスチェックの内容を最終面接で確認できることが大きなメリットであり、最終面接後に実施する場合は、さらに転職候補者を絞った後に実施することとなるため、コストメリットがあります。

これらのことから、リファレンスチェックは最終面接前後に実施することが最適ですが、最終面接前後のいずれで行うかは、自社の状況に合わせて検討すると良いでしょう。

 

【候補者向け】リファレンスチェック結果による内定取り消しの対処法

結果によっては内定後でも取り消しがあり得る、リファレンスチェックの実施。

ここでは、リファレンス結果による内定取り消しの対処法を説明します。

【内定取り消しの対処法】

  • 対処法1:不当解雇・違法ではないか確認する
  • 対処法2:弁護士に相談する
  • 対処法3:不都合の場合はリファレンスチェックを辞退(拒否)する

順に解説していきます。

 

対処法1:不当解雇・違法ではないか確認する

判例上、内定は「就労始期付解約権留保付労働契約」という労働契約が成立する考え方が確立されていることから、内定取り消しは「解雇」と同様、極めてハードルが高いものです。

内定取り消しがリファレンスチェックの結果による場合、解雇の合理性を満たしていない可能性があります。

労働基準法上、内定取り消し事由を請求することが認められています。

不当解雇でないかを「解雇理由証明書」を請求することで、速やかに確認することが望ましいでしょう。(労働基準法第22条1項

 

リファレンスチェックの関連法や違法性に関しては、以下の記事で解説しています。

リファレンスチェック実施時の違法性を徹底解説【採用候補者の経歴詐称を見抜くため秘密裏に行うと…!?】
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対処法2:弁護士に相談する

内定取り消しを採用企業と争う場合、地位確認の上、示談や調停、損害賠償請求など法定手続きが発生します。

法的手続きを個人で交渉・実施することは極めて困難なため、専門家である弁護士に相談することが必要です。

訴訟に発展するような事案であれば、裁判所のルールに基づく手続きが必要で、弁護士に依頼することが不可欠です。

 

対処法3:不都合の場合はリファレンスチェックを辞退(拒否)する

内定取り消しは解雇と同様、極めてハードルが高く、リファレンスチェック後に内定取り消しがなされる可能性は低いといえるます。

しかし、内定後のリファレンスチェックで、内定取り消しが予見される不都合な理由がある場合も少なからずあるでしょう。

このような場合は、リファレンスチェックを辞退、または拒否することも考えられます。

 

リファレンスチェック実施での内定取り消しまとめ

リファレンスチェックのメリットや質問内容、リファレンスチェックによって発覚する内定取り消し要因や内定取り消しの法的リスクなどについて説明しました。

リファレンスチェックは、一緒に働いていた上司などから、第三者としての転職候補者の評価を得ることができる有効な手段です。また、転職候補者に配慮する事項なども収集することにより、リテンションにつなげることができますので、質問項目も重要なポイントです。

内定取り消しが認められることは、法的に極めて限定的ですので、必ず内定前に行い、ベストタイミングである最終面接の前後で実施しましょう。

 

リファレンスチェックはメリットや注意点を理解した上で実施しよう

本記事でも解説したとおり、リファレンスチェックは個人情報保護や関連法などが多々あるため、実施方法によっては違法になりかねません。しっかりとリファレンスチェックへの理解を深めた上で、リファレンスチェックを実施していきましょう。

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  • この記事を書いた人

『Parame Magazine』編集部

株式会社Parame『Parame Magazine』編集部。多くの企業の採用支援や副業マッチングサービス運営の経験をもとに、人事・採用領域に携わる皆様のお役に立てるメディア・情報発信をしていきます。

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