近年、経歴詐称の防止を目的に導入されつつあるバックグラウンドチェック。
採用企業としては経歴詐称の防止やミスマッチ削減に役立つため、バックグラウンドチェック実施に前向きな企業が多いです。
しかし、バックグラウンドチェックの実施によって選考フロー(期間)が長くなると、候補者にネガティヴな印象を与えかねません。
そのためバックグラウンドチェック実施前には所要期間や実施に適したタイミングを知っておくことが重要でしょう。
そこで本記事では、バックグラウンドチェックの実施方法・タイミングや選考フローへの影響、所要期間について解説します。
これからバックグラウンドチェックの実施を検討している採用担当者の方はぜひご覧ください。
この記事でわかること
- バックグラウンドチェク(採用調査)とは
- バックグラウンドチェックを実施するタイミング
- バックグラウンドチェック実施の所要期間
- バックグラウンドチェックの実施方法
- バックグラウンドチェックの採用フローへの影響
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目次
バックグラウンドチェック(採用調査)とは?
バックグラウンドチェックとは、雇用前の身元調査で、採用選考段階で採用候補者の経歴をチェックするために実施されます。
欧米では当たり前に実施されている手法ですが、日本ではこれまで主に外資系や金融系の企業で行われていた程度でした。
しかし近年、日本でも終身雇用という価値観が変化し、転職回数が増えたことで取り入れる企業が増加しています。
ここでは、バックグラウンドチェックを実施する目的や実施するタイミング、所要期間にフォーカスして解説します。
以下の記事では、バックグラウンドチェックのメリットや実施方法などを詳しく解説しています。
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バックグラウンドチェック(採用調査)の目的・効果
バックグラウンドチェックは、将来自社に悪影響もたらすリスクを抱えていないかを事前にスクリーニングすることを目的に実施します。
事前にスクリーニングすることで、問題を抱えている、あるいは期待ほどの人物でなかったなど、採用すべきでない者の採用をしないよう、採用リスクを抑えることができます。
バックグラウンドチェック(採用調査)実施には採用候補者の同意が必要
バックグラウンドチェックは専門的な調査が必要なため、専門の調査会社が実施することが大半です。
一般化していないこともあり、調査の性質上、採用候補者から実施を拒まれることもありますが、必ず採用候補者からの同意が必要です。
調査内容は個人情報の適用を受けることから、個人情報保護法第23条(第三者提供の制限)などの定めにより、採用候補者の同意が必ず必要です。
また、同意を得た旨は、個人情報保護法施行規則第17条(第三者提供を受ける際の記録事項)により、必ず書面やデータで記録をすることが求められます。
バックグラウンドチェックに関する法律について気になる方は以下の記事をご覧ください。
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バックグラウンドチェックを実施するタイミングはいつ?
外資系企業では積極的に導入されているものの、日本企業では一般的とは言えないバックグラウンドチェック。
採用選考にあたり、どのタイミングで実施するか迷うところですが、バックグラウンドチェックを実施する最適なタイミングがあります。
ここでは、バックグラウンドチェックの最適なタイミングと、やむを得ず内定後や入社後に実施する場合の留意点について説明します。
バックグラウンドチェックは内定前のタイミングが最適
バックグラウンドチェックは調査会社に依頼することか基本ですので、調査を実施する毎に費用が発生します。
そのため、選考の早い段階で実施すると費用がかさむほか、候補者の志望度が高まっていないと、先行辞退のリスクがあります。
他方、内定後や入社後にバックグラウンドチェックを実施すると、いずれも労働契約が成立していることから、調査で何らかの問題があったとしても、解雇することは極めて困難です。
こうした事情を勘案すると、バックグラウンドチェックは、内定前のタイミングが最適といえます。
内定後や入社後のタイミングでの実施も可能
入社後に労働契約が成立しておることはもちろん、内定後においても「始期付解約権留保付労働契約」という労働契約が成立するとの考え方が確立されています。
そのため、バックグラウンドチェックで重大な問題が発覚したときは、内定取り消しや解雇をすることが考えられます。
しかし、解雇できるのは、重大な経歴詐称などに限られると裁判所でも判断されており、解雇は容易にできるものではありません。解雇することが合理的・客観的、かつ社会通念上、妥当と認められる場合に限り、可能となっているように極めて限定的です。
内定後や入社後にバックグラウンドチェックを実施することは可能ですが、解雇するにはハードルが極めて高いことに留意が必要です。
バックグラウンドチェックの実施方法①:調査会社に依頼する場合
バックラウンドチェックは専門的な調査のため、調査会社に依頼することが一般的です。
そこで以下では、調査会社に依頼した場合の流れと所要期間を解説します。
調査会社に依頼する場合の流れ
調査会社に依頼する場合の流れは次のとおりです。
調査会社に依頼する場合の流れ➀:採用候補者からの同意取得
採用企業は、採用候補者よりバックグラウンドチェックを実施する旨の同意を得ます。
社会的差別につながる可能性のある「犯罪歴」など、要配慮個人情報が調査対象に含まれる場合、違法リスクがあることに留意が必要です。
また、それらの情報を取得することについては、個人情報保護法第17条2項(適正な取得)により、採用候補者から同意を得ることも必要です。
調査会社に依頼する場合の流れ②:バックグラウンドチェックの依頼
調査会社の調査範囲のうち、どのような調査を依頼するのかを取り決め、採用企業より、調査会社にバックグラウンドチェックを依頼します。
調査会社に依頼する場合の流れ③:バックグラウンドチェックの実施
採用企業の依頼に基づき、調査会社にてバックグラウンドチェックを実施します。
職歴については、在籍証明書、退職済みであれば退職証明書、学歴については卒業証明書の提出を採用候補者より提出を受け、調査会社にて事実確認を行います。
不自然な空白期間、あるいは職歴期間の整合性など、関係機関や周囲の人物への聞き込みなどにより調査を実施します。
調査内容によっては、SNS調査や独自のデータベースを用いる事もあります。
調査内容については以下で詳しく解説しています。
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調査会社に依頼する場合の所要期間(日数)
バックグラウンドチェックの所要期間は、調査の内容や実施方法によって違いがあります。
調査会社毎に所要期間にばらつきがあり、早くて中2日、長くても1週間以内です。
調査項目によっては、現地調査のため長く時間を要する事もありますが、目安として、1週間以内と考えて良いでしょう。
バックグラウンドチェックの実施方法②:企業自身で調査する場合
バックグラウンドチェックは、専門的な調査を含むため、企業自身で実施するには限界があります。
学歴や職歴、候補者の態度など対応可能な範囲で実施することが現実的といえます。
企業自身で調査する場合の流れ
企業自身で調査する場合の流れを説明します。
企業自身で調査する場合の流れ➀:採用候補者からの同意取得
バックグラウンドチェックを実施することについて、採用候補者から同意を得ます。
取得した個人情報の利用目的の説明も必要です。
企業自身で調査する場合の流れ②:証明書類の提出依頼
在籍証明書、あるいは退職証明書、最終学歴の卒業証明書の提出を採用候補者に依頼します。
勤務態度を対象範囲に含む場合は、リファレンス先の申し出、または指定が必要です。
企業自身で調査する場合の流れ③:調査の実施
提出された証明書に虚偽性が疑われる場合、直接、証明書の発行機関に問い合わせをします。
ただし、個人情報の観点から問い合わせに応じることが少ないと考えられ、できる範囲での対応にとどまるでしょう。
職歴については、源泉徴収票や雇用保険の加入歴などから確認します。
詳しいやり方については以下の記事が参考になります。
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企業自身で調査する場合の所要期間(日数)
所要期間は、企業の体制などによって各様ですが、調査範囲は限られています。
簡易的なインターネット調査であれば1~2日ほどで終わりますが、経歴や勤務態度を調査対象に含む場合は、少なくとも2〜3週間かかる可能性があります。
日常業務をこなしつつ、採用業務を行う人事担当者の負担は大きいものです。
バックグラウンドチェックを並行して実施する場合は、想定外の時間を要することもあるでしょう。
バックグラウンドチェックの実施方法③:リファレンスチェックで代替する場合
リファレンスチェックは、採用企業と採用候補者との相性を見ることが目的であり、実施目的に違いがありますが、ここでは、リファレンスチェックで代替する場合の流れと所要期間について説明します。
リファレンスチェックの詳しい説明は以下記事でご覧ください。
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リファレンスチェックで代替する場合の流れ
リファレンスチェックは、オンラインサービスや調査会社、あるいは自社で実施することもありますが、ここでは共通する内容を解説します。
リファレンスチェックで代替する場合の流れ➀:採用候補者からの同意
バックグラウンドチェックと同様、採用候補者からの同意は必ず必要です。
書面、またはデータで必ず同意を得た旨の記録を残しますとともに、リファレンス先の決定を行います。
リファレンスチェックで代替する場合の流れ②:リファレンス先の依頼
採用候補者より、リファレンス先となる上司や同僚に実施する旨の説明等を行います。
通常、リファレンス先は二つ以上に依頼します。
リファレンスチェックで代替する場合の流れ③:リファレンスチェックの実施
調査会社、オンラインサービス、あるいは採用企業にてリファレンスチェックを実施します。
オンラインサービスの場合は、メール等にオンラインサービスのログイン先を通知します。
本人確認を経てリファレンスチェックを実施しますが、推薦者のなりすましに留意が必要です。
リファレンスチェックでのなりすましを防ぐ方法は以下で解説しています。
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リファレンスチェックで代替する場合の所要期間(日数)
リファレンスチェックの期間は、実施方法によって各様です。
オンラインサービスは、比較的短期間に実施可能で、平均3日程度が主流です。
対面、あるいは電話で実施する場合、リファレンス先との日程調整が必要ですが、ポジションが上位であるほど調整がしづらく、1〜2週間はかかると考えられます。
バックグラウンドチェック(採用調査)の選考フローへの影響
バックグラウンドチェックの所要期間が長いと選考フローに影響することがあります。
ここでは、バックグラウンドチェックの所要期間の比較や選考フローへの影響について説明します。
バックグラウンドチェック(採用調査)の所要期間(日数)比較
バッググラウンドチェック調査方法 | 所要期間 |
調査会社に依頼 | 2日〜1週間 |
採用企業で実施 | 2〜3週間 |
リファレンスチェックで代替 | 3日程度 |
バックグラウンドチェックは専門的な調査を含むため、調査会社に依頼すれば早くて中2日、目安としては1週間程度です。
しかし、企業自身が行う場合、限られた調査範囲内で対応しても2〜3週間、環境によってはそれ以上かかることもあります。
調査会社に依頼する場合、比較的短期間で対応可能です。
バックグラウンドチェック(採用調査)は1週間以内のため選考フローに影響しない
バックグラウンドチェックは、採用企業自身で行う場合は、選考フローに大きく影響するリスクがあります。
調査会社に依頼する場合は、概ね1週間以内に実施可能ですので、選考フローに影響ありません。
バックグラウンドチェック(採用調査)の所要期間(日数)まとめ
バックグラウンドチェックは、専門的な調査を多く、法令的に取得が禁じられている個人情報もあります。
採用企業自身が実施する場合は、コンプライアンスの観点でリスクが大きいほか、実施しても調査できる範囲は限られ、所要期間も長期にわたる可能性が高くデメリットが多いといえます。
バッググラウンドチェックを調査会社に依頼した場合の期間は、早くて中2日程度、基本的には1週間あれば実施可能ですので、選考フローに影響することはありません。
コンプライアンス体制がしっかりした調査会社に依頼することで、選考フローに影響させることなく、バックグラウンドチェックを実施しましょう。
バックグラウンドチェックはメリットや注意点を理解した上で実施しよう
本記事でも解説したとおり、バックグラウンドチェックは実施の流れが煩雑ですし、実施方法によっては違法になりかねません。しっかりとバックグラウンドチェックへの理解を深めた上で、バックグラウンドチェックを実施していきましょう。
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